空室対策にリノベーションを活用する方法とは?進め方や成功事例を解説

空室対策にリノベーションを活用する方法とは?進め方や成功事例を解説








「空室対策でリノベーションを検討したい」
「リノベーションをしたいが、何から始めればよいかわからない」

 

賃貸経営において空室対策は重要な課題ですが、単なる原状回復ではなく、戦略的なリノベーションを行うことで、入居率の向上や賃料アップが期待できます

 

本記事では、賃貸不動産の空室対策としてのリノベーションにフォーカスし、具体的な進め方や成功事例をご紹介します。リノベーションの効果を最大限に高めるポイントを押さえて、収益性の向上につながるリノベーションを実現しましょう。

 

 

リノベーションは空室対策に有効な手段


 

リノベーションとは、既存の建物に対し大規模な改修を施し、デザインを刷新したり、設備機能を向上させたりすることを指します。
空室対策としてリノベーションを行う最大の目的は、 物件の魅力を向上させ、入居希望者に「住みたい」と思われるようになることです。数ある空室対策の中でも、リノベーションは募集期間の短縮だけでなく、家賃アップも期待できる効果的な施策のひとつです。

 



近年では 「リノベーション」という言葉の認知度が高まり、リノベーション物件に対する入居者の関心も高まっています。そのため、「リノベーション済み物件」として募集を行うことで、他の物件との差別化が図れ、より良い印象を与えることができます。

 

 

費用対効果を考慮した空室対策リノベーションの進め方


 

賃貸物件の空室対策リノベーションには、通常の原状回復工事に加えて追加の投資(費用)が発生します。しかし、賃貸経営は事業であるため、かけた費用は適切に回収し、収益向上につなげることが重要です。無駄な投資を避け、最大限の効果を得るためには、計画的にリノベーションを進めることがポイントとなります。

 

ここからは費用対効果を考慮した空室対策リノベーションの進め方を解説します。

 



 

 

①ターゲット層・ペルソナの設定


 

まず、どのような入居者をターゲットとするのかを明確にすることが重要です。ターゲット層によって、設備・間取り・内装デザインの方向性が大きく変わります。
ターゲット層を設定する際は、次のような方法で入居者ニーズを分析しましょう。

 

  • 現入居者の属性を調査(年齢・家族構成・職業・年収・勤務先など)

  • 過去の内見者、検討者の属性を確認

  • 近隣の競合物件の入居者層をリサーチ


 

 

②ターゲットに合わせたリノベーション方針の策定


 

ターゲット層が決まったら、それに合わせた空室対策リノベーションの方向性を策定します。リノベーションには以下のような種類や選択肢があります。

 

  • 専有部リノベーション(住戸内のリノベーション)

    • 内装のリニューアル(クロスやフローリングの貼り替え、デザイン変更)

    • 間取り変更(和室から洋室、2DK→1LDKなど)

    • 設備更新(キッチン、浴室、トイレなどの交換・グレードアップ)




 

  • 共用部リノベーション(建物全体の価値向上)

    • 外壁やエントランスの改修(塗装、タイル張り替え、デザイン変更)

    • 共用施設の改善(郵便受けや宅配ボックスの設置、照明の変更)




 

 

③概算で採算性の確認


 

リノベーションの方向性が決まったら、すぐに詳細な見積もりを取るのではなく、 概算費用を基に採算性を確認 しましょう。リノベーションには通常の原状回復工事に加えて投資(費用)が必要ですが、その費用を適切に回収できるかどうかがポイントです。

 

以下の計算式を活用すると、費用対効果を簡単に試算できます。当社では、投資利回りが12%以上を一つの目安としています。

 



 

また、 税引後のキャッシュフローシミュレーション を行い、時間経過を考慮した採算性を確認することも重要です。もし採算性が著しく低い場合は、リノベーションの方針を再検討し、より収益性の高いプランに変更しましょう。

 

 

④詳細見積り・プラン設計


大まかな採算性の確認が取れた段階で、詳細のプラン設計と見積りを開始しましょう。

 

 




 

 

専有部リノベーション事例


 

和室の柱の風合いを活かした和モダンリノベーション


 

<物件概要>

  • 構造等:木造2階建

  • 建築時期:昭和51年6月


 

<リノベーション内容>

古めかしさが目立っていた和室を、あえて和の風合いを活かしたカラーデザインでリノベーション。和室から洋室へ変更し、紺色のアクセントカラーとダークブラウンの色合いを取り入れることで、落ち着きのある古風な和の趣を演出。和の魅力を活かしながら、現代のライフスタイルにも馴染む空間へと生まれ変わるリノベーションを実施しました。

 

<結果>

  • 月額賃料27,000円アップ


 

<BRFORE>



 

<AFTER>



 



 

 




 

 

無垢材の床を使用し、飽きのこないナチュラルテイストのリノベーション


 

<物件概要>

  • 構造等:鉄筋コンクリート造3階建

  • 建築時期:昭和49年3月


 

<リノベーション内容>

築50年が経過し、内装の古さが目立っていた物件をリノベーション。無垢材の床と白い壁紙を組み合わせることで、温もりのあるナチュラルテイストの空間に生まれ変わらせました。さらに、キッチンやトイレなどの水回り設備も一新し、快適性を向上。シンプルでありながら上質なデザインが、長期的な入居を促す住まいを実現しました。

 

<結果>

  • 工事中に入居申し込みを獲得

  • 月額賃料 約70,000円アップ


 

 

<AFTER>



 



 

 




 

 

共用部リノベーション事例


 

周辺の緑からカラーを採用し、自然と調和する物件に


 

<物件概要>

  • 構造等:軽量鉄骨造3階建

  • 建築時期:平成4年3月


 

<リノベーション内容>

建物全体をホワイトを基調としたカラーリングに変更し、アクセントとして周辺の緑から抽出したグリーンを玄関ドアや階段に採用。周辺の自然と調和しながらも個性が際立つリノベーション物件へと生まれ変わりました。

 

<結果>

  • 入居率が90%前半から97%へ上昇

  • 月額賃料が2,000~4,000円アップ


 

<BEFORE>



<AFTER>



 



 

 




 

 

 

木をあえて残した、木造の温もりを感じる和モダン共用部リノベーション


 

<物件概要>

  • 構造等:木造2階建

  • 建築時期:昭和51年6月


 

<リノベーション内容>

木造ならではの風合いを活かし、和モダンな共用部リノベーションを実施。外壁は漆喰風の白に塗装し、窓や共用部の目隠しには蔵造り風の木製格子を採用。和の趣を際立たせるデザインに仕上げました。

 

<結果>

  • 月額賃料が27,000円アップ


 

<BEFORE>



 

<AFTER>



 

 




 

 

カラフルな4色木目調フェンスでかわいらしい共用部リノベーション


 

<物件概要>

  • 構造等:木造2階建

  • 建築時期:昭和62年4月


 

<リノベーション内容>

30代前後の若い夫婦をターゲットに、柔らかな4色のカラーバリエーションを取り入れた木目調の意匠フェンスを設置。ポストや物件の表示板も統一感のあるデザインに変更し、温かみのある印象をリノベーションで演出しました。

 

<結果>

  • 月額賃料10,000~20,000円アップ


 

<AFTER>



 



 

 

 

 

 

空室対策で陥りがちなミスとは?失敗を防ぐための回避策を解説

空室対策で陥りがちなミスとは?失敗を防ぐための回避策を解説










賃貸不動産の空室問題に悩む不動産オーナーは少なくありません。空室の増加は収益の減少に直結するため、手早く適切な対策が必要です。

 

本記事では、空室対策で陥りがちなミスと、その回避策を解説します。無計画な対応を避け、戦略的に空室対策を進めることで、より高い成果を得ることができます。

 

 

 

1.空室対策の最終ゴールを明確にしない


 

空室対策を進める際には、「いつまでに、どのような状態を目指すか」というゴールを明確に設定することで、より効果的な具体的アクションを導き出すことができます。

単に「空室を埋めたい」と考えるだけではなく、

 

  • 家賃水準はいくらを目標にするのか

  • 募集期間や入居率はどの程度を目標にするのか


 

といった具体的な数値目標を設定することで、実行すべきアクションが明確になります。

 

例えば、「家賃を前回入居者から10,000円アップを目指し、募集から成約までの期間は2ヶ月とする」という目標を設定した場合、

過去の募集事例を基に目標家賃での成約見込みや想定募集期間を推定できます。その情報をもとに、

 

  • 家賃を向上させるためのリフォーム計画を検討する

  • 広告戦略や不動産会社への手数料設定を最適化する


 

といった具体的な計画を立てることが可能です。

空室対策を検討する際は、場当たり的なアイデア出しから始めるのではなく、まず 最終ゴールを明確にする ことが大切です。これにより、無駄なコストや時間を省き、より効果的な対策を講じられます。

 



 

 

 

 

2.原因を検証せずに空室対策を進める


 

空室対策の問題を抱えている場合、原因を分析せずに対策を講じても、十分な効果は期待できません。

例えば、「なかなか内見が入らない」という問題に対し、安易に「家賃を下げよう」「リフォームをしよう」といった表面的な対策だけでは、無駄なコストが発生する可能性があり、根本的な解決にはなりません。

 

空室対策を効果的に進めるためには、「商品力」と「営業力」 の2つの視点で原因を分析することをお勧めします。

 

  • 商品力:「住みたい」と感じてもらえる魅力のある物件になっているか

  • 営業力:物件の情報や魅力が検討者に十分に伝わっているか


 

 



 

 

以下にそれぞれのチェックポイントを揚げました。是非参考にしてみてください。

 

<商品力>のチェックポイント

  • 賃貸条件(家賃、敷金・礼金など)が市場に合っているか

  • 共用部の管理状況(清潔感・明るさ)は十分か

  • 専有部の内装・設備は競争力があるか


 

<営業力>のチェックポイント

  • 不動産業者間の情報ネットワークに空室情報が登録されているか

  • 不動産ポータルサイトに情報が適切に掲載されているか

  • 物件図面や掲載に過不足や誤りがないか

  • 仲介会社向けの報酬(広告料)が適切に設定されているか


 

尚、これらの原因分析を進める際は、提携している仲介会社や管理会社からのヒアリングも重要です。

情報交換を密に行い、本質的な問題を見出すことで、より効果的な空室対策を講じることができます。

 

 

 

 

 

3.複数の対策を検討せず、優先順位を付けない


 

空室対策にはさまざまな方法がありますが、それぞれ費用や効果が異なります。 その場の思いつきや感覚で対策を選ぶのではなく、

 

  1. 考えられる対策を洗い出す

  2. 費用対効果を比較する

  3. 優先順位を決めて実行する


 

というプロセスが重要です。

 



 

例えば、「空室期間を○○日以内に抑える」という目標を設定し、それに対する課題として「原状回復工事に時間がかかりすぎている」という点が挙げられたとします。

この場合、次のような解決策が考えられます。

 

<考えられる対策>

  • リフォーム事業者を変更する

  • リフォームプランを事前に定型化する

  • 工事に必要な設備・資材をあらかじめ確保しておく

  • 解約予告期間を長めに設定し、工事スケジュールを前倒しする

  • 原状回復と並行して募集を進める


 

各対策のコストと効果を比較し、最適な方法を選ぶことが重要です。

 

例えば、「原状回復工事と並行して募集を進める」や「リフォームプランの定型化」は、仕組み次第で低コストで実現可能です。一方、「解約予告期間を長く設定する」ことは、募集や契約に悪影響を与えるリスクもあるため、 効果とリスクのバランスを考慮しながら最適な施策を選択する必要があります。

 

空室対策の打ち手を決める際には、場当たり的に決めるのではく、掛かるコスト・費用と効果を考慮して検討しましょう。

 

 

 

 

4.空室対策の効果・成果を記録しない


 

空室対策を効果的に進めるには、実施した対策がどれだけ成果を出したかを定期的に評価し、記録しておくことが重要です。

蓄積した記録は、今後の空室対策を検討するうえでの貴重な財産となります。

 

<成果測定のポイント>

  • 数値での評価(例:入居率、空室期間、募集期間、広告反響率 など)

  • 定性的な評価(例:入居者や不動産会社からのフィードバック など)


 

記録を基に対策の効果を分析し、その結果を活かすことで、次回の空室対策の精度を高め、効果を最大化できます。

都心周辺エリアのファミリータイプ中心に賃料が上昇中



都心周辺エリアのファミリータイプ中心に賃料が上昇中








分譲マンション価格の上昇が賃貸相場にも影響を与えている


ここ数カ月、一部エリアの賃貸不動産の賃料が上昇しています。特に、都心部周辺エリアの好立地のファミリータイプについては、その傾向が顕著に表れています。


賃料アップの要因はいくつかありますが、その一つが分譲マンションの価格上昇です。今や東京23区の新築分譲マンションの平均価格は1億円を超えました。そのため、購入を考えていた層が購入を諦め、賃貸に流れてきているのです。都心の利便性を求めるパワーカップルなどが立地の良いエリアで質の良い賃貸マンションを求めるようになっており、賃料を高くしても借手が付くようになりました。










賃料の上昇が顕著なのは好立地、ハイグレード賃貸


賃料がアップしている物件の特徴を見てみると、立地の良いエリア、分譲マンション仕様の高品質な賃貸物件となっています。

物価上昇が見込まれる中、このような状況を踏まえ、当社ではより積極的な賃料アップの提案をしており、高値が狙える物件については、次のようなことを推奨しています。

①思い切った賃料設定をする

②改良工事で共用部、専有部を分譲マンションに近づける

③更に、今後賃料の上昇が見込まれる物件は定期借家契約とし、賃料上昇に柔軟に対応できる状態にしておく

実際、このような対策を行うことで、左にあるように高い賃料を実現した物件もあります。

いずれにしても、今後の為替変動を注視する必要がありそうです。









ただし、このような対策を取れば全ての賃貸物件の賃料がアップするかというと、残念ながらそうはいきません。ですから、採算性も考えながら、可能性のある物件に絞って取り組むことをおすすめします。まずは当社にご相談ください。









株式会社 市萬 賃貸事業部

二級建築士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、JSHI公認ホームインスペクター(合格者)

下田 晃大


長期視点で最適なご提案をいたします


「築年数が古い」「駅から遠い」など、さまざまな問題を抱えた賃貸不動産の課題分析および満室化に向けた提案や、建物長期活用のための建物メンテナンス提案を行う。







円安による不動産経営への影響



円安による不動産経営への影響









2012年頃は1ドル80円前後だったドル円相場は、昨年夏には倍の160円前後となり、現在も140円前後と以前に比べて円安水準が続いています。トランプ政権となり円安は緩和されつつありますが、まだまだ為替相場の先は見通せない状況です。そして、この円安は不動産経営にさまざまな影響を与えています。


円安による影響には、次のようなものが挙げられます。輸入資材の上昇による修繕費や建築費の上昇、海外からの投資増加による好立地の不動産価格の上昇、それに伴う好立地の分譲マンション住戸の賃料上昇などです。










円安は不動産経営にとってマイナスなだけではなく、プラスの面もあります。ですから、為替変動が不動産経営にどのような影響を与えるのかを把握しておくことが大切です。不動産の売買においては経済情勢をみながら買いのタイミングを見極め、慎重に行動しましょう。また、賃貸経営においては、円安による輸入建築資材価格の上昇で、物件の維持管理に必要な修繕やリフォーム工事の費用が当初想定していたより高額になる可能性があります。そのため、計画の変更を検討する必要があるかもしれません。


いずれにしても、今後の為替変動を注視する必要がありそうです。











株式会社 市萬 資産コンサルティング部

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

笠原 陽子







東京工芸大学工学部建築構法研究室と共同で ワンルームマンション長期活用の研究を実施



東京工芸大学工学部建築構法研究室と共同でワンルームマンション長期活用の研究を実施








建物長期活用を学生と考える産学連携の結果発表会を実施


当社では建物を長期活用するための取り組みの一つとして、2つの大学と産学連携を行っています。


一つは武蔵野大学工学部サスティナビリティ学科の学生と行っている「原状回復における脱炭素化の研究」。そして、もう一つが東京工芸大学工学部建築構法研究室の学生とともに行っている「ワンルームマンションの間取り変更を伴う長期活用に関する研究」です。


この度、東京工芸大学工学部建築構法研究室との研究結果がまとまり、オーナー様に向けたプレゼンという形で発表会を行いました。



ワンルーム賃貸の未来をつくる住戸を繋げて1住戸に再生


メインターゲットである若者減少に伴いワンルーム(1R)のニーズは大きく低下すると考えられており、その対策が急務です。その課題に取り組んだのが、東京工芸大学建築デザイン分野森田研究室との研究です。1Rの未来を見据え、2~3住戸を繋げて1住戸とし、新たな価値を作ることで長期活用を考えました。


学生との顔合わせは昨年4月。当社管理物件を研究対象とし、現地見学や当社にてミーティングを実施し、どのようなプランが作れるのか?採算はとれるのか? 学生とともに考えました。間取りプランは学生が、改修概算費用や賃料、事業性評価のためのキャッシュフローシミュレーションは当社で行いました。








学生ならではのプラン提案に1Rの将来性を感じる


学生のプランには広々とした土間や窓際にヌック(こじんまりした空間)を設けるなど、+αの空間を取り入れた提案が多く見られました。また、共用部を専有部に取り入れ、広さを確保するプランなど、学生ならではの発想が見て取れました。
物件オーナーからも「学生の斬新なプランが参考になったので、前向きに考えてみたい」というお言葉をいただいています。
今後の展開が楽しみです。











株式会社 市萬

宅地建物取引士 公認 不動産コンサルティングマスター 2級ファイナンシャル・プランニング技能士

中澤 一世







複数の診断書を活用し 賃貸経営を長期間成功に導く



複数の診断書を活用し 賃貸経営を長期間成功に導く









定期的な清掃や修繕、入居者対応など、やることが多い賃貸経営。もちろん、日々の対応は重要ですが、長期的な視点で賃貸経営を見ることも重要です。


例えば、いつ大規模修繕が発生するのか、費用は?キャッシュフローが厳しくなるのはいつ頃か、そもそも不動産経営は上手くいっているのか、相続税はいくらなのか。そのようなことを事前に知ることで、対策を考えることができます。


当社では2年前からさまざまな診断を活用した提案を行っています。実施しているのは左記にある5つの診断です。これらのデータを分析し、長期的視点でより良い提案につなげています。


業界の既成概念にとらわれず、他業界の経営手法を取り入れることで、新たな効果的なアイデアが生まれる可能性があります。











例えば、建物劣化診断によって大規模修繕工事の必要性が高まってきていることが事前に分かれば、その費用を準備することができます。また、キャッシュフロー診断をすれば毎年貯めておける額も予想できますし、借り入れをした場合の採算性も確認することができます。毎年の賃貸経営診断によって現状の課題と対策を見直していくことで、臨機応変に対応していくことも可能となります。











株式会社 市萬 賃貸事業部 課長

宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士

竹内 将人







築30年超建物所有のオーナー様必見!避けて通れない、給水・排水管修繕


築30年超建物所有のオーナー様必見!避けて通れない、給水・排水管修繕




大規模修繕を実施し、建物を長く活用しようとする賃貸オーナーが増えてきました。実は、建物長期活用のために大規模修繕と同じくらい重要なのが「給水・排水管修繕」です。

給排水管は人間で言えば血管と同じです。コレステロールなどで血管が詰まると身体に問題が起きるように、給排水管の汚れやサビを放っておくと、配管が詰まって水が流れない、穴が開き漏水するなどのトラブルにつながります。そうならないためには、維持管理(排水管洗浄など)や管内の現況確認が必要ですが、それだけではなく、給排水管には寿命があるため、適切な時期にリニューアルや交換などの修繕が必要です。

しかし、建物の外壁などと異なり明確に劣化を目視できないため、漏水などのトラブルがあって初めて、劣化を認識し対応することがほとんどです。

給排水管は一般的に30年~40年毎に修繕の必要があります。トラブルが発生してからでは入居者に迷惑がかかるだけでなく、修繕費用以外の費用が掛かる場合もあるので、築30年を過ぎたらぜひ一度、配管調査を実施することをお勧めします。定期的な修繕でトラブルを未然に防ぐことが、安定した賃貸経営にとっても重要です。

どうしたらよいのかわからない場合には、当社のパートナー会社とともに、修繕のご提案をさせていただきますので、ご相談ください。



種類によって異なる耐用年数


給排水管は建築時期によってトレンドがあり、使われている材質が異なります。材質によって寿命も異なるため、先ずは所有物件の給排水管の材料を確認することが大事です。ぜひ、専門家に依頼し確認しましょう。

給排水管の耐用年数は水質や使用環境によって左右されますが、おおよそ下記表のとおりです。
今は、劣化の進行が緩やかな樹脂系管材が多く使われており、修繕周期が長周期化しています。




給排水管修繕工事費用以外のリスク


給排水管の修繕の修繕を怠ると、修繕工事費用以外にも下記リスクが考えられます。

入居者避難時のホテル費用負担


漏水などで住めない状況になった場合、改修が終了するまでホテルなどに滞在してもらう必要あり。



汚損、破損した機器などの弁償費用負担


漏水などによる家財や電化製品などの損害に対する弁償費用が発生。



改修工事や入居者の避難中の賃料減や退去


改修工事終了まで、賃料収入無し。これを機に退去の可能性あり。



血管のように張り巡らされたアパート・マンションの配管



給水・排水管は部屋の中の床、壁の中に通されています。床、壁の中なので普段は見ることが出来ず、内装材を剥がさなければ見ることができません。場合によっては、自宅外となる下階の天井内を通しているケースもあります。



給水・排水管劣化事例



老化した給水・排水管はサビなどにより水の出が悪くなったり、穴が開いたりして漏水の牽引となります。また、鉄管は給水時に赤水(錆が混入した水)が出る事もあり、早急な修繕が必要です。




給排水管修繕には「更新工事」と「更生工事」があり、前者は配管を劣化しにくい新しい配管へ取替える工事、後者は使用中の配管内に樹脂膜を形成し延命を図る工事です。












空室期間の短縮にこだわる。他業界のプロセス管理手法を応用した空室対策アイデア


空室期間の短縮にこだわる。他業界のプロセス管理手法を応用した空室対策アイデア





「賃貸アパート・マンションの空室期間をなるべく短くしたい」
「空室期間短縮のために、他にできる対策はないだろうか」

本記事では、製造業や物流業で用いられるサプライチェーンマネジメントを参考に、プロセスの最適化を通じて空室期間を1日でも短縮するための空室対策アイデアを紹介します。

業界の既成概念にとらわれず、他業界の経営手法を取り入れることで、新たな効果的なアイデアが生まれる可能性があります。



賃料設定にこだわるか。空室期間にこだわるか。


賃貸アパート・マンションの収入は「賃料 × 入居率」で決まります。

理想をいえば賃料も最大限に高く、且つ、空室期間も短いことが望ましいですが、一般的には家賃条件と空室期間はトレードオフの関係になります。つまり、一方を追求するともう一方を犠牲になるという、二律背反の状態になりやすいということです。

例えば、募集賃料を高く設定しても、入居が得られず空室が長く続いたり、早期の退去に繋がると、入居率が低下して、結果的にトータルの収入は減少します。逆に、賃料を低めに設定すれば入居は早まるかもしれませんが、あまりにも安すぎると、収益全体が低減するリスクもあります。

このバランスの取り方はオーナーごとに異なりますが、賃貸不動産経営においては、賃料と入居率の調整が、トータルの収益を左右する非常に重要な判断となります。




賃料は相場に合わせ、入居率を高める空室対策を


最近では、インターネットの普及により、消費者が物件の価格情報を手軽に入手できるようになりました。不動産ポータルサイトや相場情報サイトの増加で、賃料相場の透明性が飛躍的に向上し、賃料に対する市場の理解が深まっているということです。

そのため、特にアパートやマンションなどの居住用賃貸物件では、かつてのように成約賃料のばらつきが少なくなり、相場から大きく外れた価格で取引されることはほとんどなくなってきました。つまり、適正な価格設定を行わない物件は、空室期間が長期化するリスクが高まっているということです。

このような背景から、不動産賃貸経営で収益を最大化するには、相場に合わせた適正な賃料設定をおこない、空室期間を短縮するための対策が非常に重要です。




空室期間を短くするための空室対策


賃貸物件の空室期間を短くすることは、オーナーにとって収益の最大化に直結します。そのために、空室対策として、物件供給を一つの「サプライチェーン」として捉える考え方が有効です。ここでは、サプライチェーンマネジメントの手法を賃貸不動産に応用する方法をご紹介します。



サプライチェーンマネジメントとは?


サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、商品やサービスを消費者に届けるための全プロセスを効率化し、コストを削減しながら納期を短縮し、売り上げの拡大を図る管理手法です。製造業や流通業でよく用いられていますが、この考え方は賃貸アパートマンションの空室対策にも適用できます。




SCM視点で考える空室対策アイデア


部屋の退去から新しい入居者が決まるまでの一連の流れを一つのプロセスとして考えると、SCMの手法を使って空室期間を短縮することが可能です。
ここでは、退去から次の入居までの期間を「リードタイム」とし、これを短くするための対策をいくつか紹介します。



・原状回復、リフォーム工事の標準化


原状回復の工事内容をあらかじめ決めておくことで、工事を始めるまでの時間を短縮し、品質トラブルを避けることができます。



・退去決定後、即座に募集情報を共有し先行募集


退去が決まった段階で、募集関係者にスムーズに情報共有し、先行した募集ができる体制を整えます。例えば、潜在的な顧客に募集を予告する、退去後の募集を最短スタートできるように募集準備を先行するなどの具体的対策が考えられます。



・契約書類を事前に準備


工事内容が決定、もしくは募集が始まると同時に、契約書類の準備を始めることで、申し込みから契約締結までの期間を短縮できます。あらかじめひな型を仲介会社や検討者に共有できていれば、契約トラブルを避ける対策にもなります。特に居住用賃貸不動産の場合、事業用物件や売買物件と比較して、契約条項や重要事項説明書の定型化が容易です。



・審査業務の定型化・効率化


入居者の審査プロセスを効率化・定型化し、迅速に対応できる体制を整えることで、無駄な時間を減らします。






株式会社市萬
中小企業診断士 宅地建物取引士 2級ファイナンシャルプランニング技能士


山村 諭史






入居者ニーズを取り入れた商品力UPのための空室対策


入居者ニーズを取り入れた商品力UPのための空室対策





「空室対策に効果的な内装や設備のリフォーム方法を知りたい」
「最新の内装トレンドや入居者の設備ニーズについて知りたい」
アパートやマンションの空室に悩む不動産オーナーにとって、物件の魅力づくりは、入居者を確保するために欠かせない要素です。

本記事では、空室対策として「物件の魅力づくり」に焦点を当て、早期に申し込みを得るための具体的な対策を詳しく解説します。この記事のポイントを押さえることで、効果的な対策が進められるようになります。



≪空室対策における「商品力」とは≫


空室対策における「商品力」とは、物件の魅力を高め、入居者に「住みたい」と感じさせる物件づくりのことです。いくら積極的に募集活動をおこない、検討者の目に届いたとしても、物件そのものに魅力がなければ、内見や申し込みには繋がりません。やみくもにお金をかけるのではなく、費用対効果を考慮し、的確なポイントに絞った対策が重要です。




≪魅力づくりポイントは「明るさ」と「清潔感」≫


人口や世帯数の減少に加え、新築住宅の継続的な供給が続く中、空室問題は今後も不動産オーナーにとって避けられない課題となります。

設備性能は時代とともに向上し、内装デザインの嗜好・ニーズも変化しています。空室対策の観点では、単に「壊れた部分を修理する」原状回復・リフォームだけでは、入居者を引きつける物件にはなりません。

物件の商品力を高めるためには「明るさ」と「清潔感」を意識した物件づくり、そして入居者ニーズに答えるプラスαの改良工事が重要です。

ここでは、専有部と共用部に分けて、物件の魅力を高める空室対策のポイントを解説します。



●共用部の魅力をアップする空室対策


共用部の商品力UPで重要なポイントは「エントランス」「ごみ置き場」「駐輪場」の3点です。これらの場所は、特に入居者はもちろん来訪者の目に留まりやすく、利用頻度も高いため、物件の印象に直結します。
これらの場所に汚れや不具合があり、「暗さ」や「汚さ」を感じさせると、物件全体の評価が大きく下がってしまいます。

共用部の空室対策では、まずはこの3つのエリアに絞って、明るさと清潔感を意識した改良を進めることが大切です。



1.エントランス


壊れかけたポスト、散らばったチラシ、枯れ葉や埃、薄暗い照明。このようなエントランスが物件の魅力を下げる典型例です。ポストや掲示版などの基本的な設備を整え、定期的に清掃し、明るい照明を設置することで、清潔感と明るさを保つことが大切です。

2.ごみ置き場


共用のごみ置き場が野ざらしの状態になると、雨風やカラスのいたずらによってごみが散乱し、臭いが発生しやすくなります。また、ごみが丸見えの状態は物件の印象を大きく損なう要因となります。
ゴミストッカーやスチールメッシュを使用したごみステーションの設置をおすすめします。これにより整理整頓された清潔な状態を保てるだけでなく、入居者にとっても利便性が向上します。

3.駐輪場


放置自転車や雑然とした駐輪場は、物件の印象を下げる典型的な要因です。また、駐輪場周辺は汚れがたまりやすく、私物が放置されがちです。
駐輪場の整備では、屋根の設置、区画ライン引き、ラックの設置が効果的です。整然と並べられた駐輪場は入居者に良い印象を与え、快適な環境を提供します。




●専有部の魅力をアップする空室対策


内装のトレンドは時代と共に大きく変化します。建築当時の色使いをそのまま踏襲する原状回復では、余計に古臭さが際立ち、入居者にマイナスな印象を与えてしまうことにもなりかねません。
また、入居者が重視する設備も時代と共に変わってきています。魅力的な物件を提供するためには、ニーズ変化に応じた柔軟な空室対策が必要です。



1.分譲マンションのトレンドから内装デザインを


大日本印刷株式会社(DNP)が発行する「マンションインテリア動向レポート」では、マンションインテリアのトレンド変遷がまとめられています。特に、内装のカラートレンドは賃貸住宅の内装を検討する際にも多くのヒントを提供してくれます。

例えば、バブル期のマンションでは、整った重厚な高級感が人気で、白い壁紙にダーク系で統一された床、巾木、建具を組み合わせた濃淡のコントラストが効いた内装デザインが主流でした。このデザインはバブル期前後に大量供給された賃貸住宅でもよく使われています。




しかし、現代のトレンドは床・建具ともに淡い色使いに大きくシフトしてきています。また、床と建具の色相やトーンも統一せず、あえてバランスを崩してアクセントを効かせたカラーコーディネートが増えてきています。ほかにも、巾木は壁紙とトーンを合わせる仕上げが圧倒的に増えていたり、床シートの巾幅も時代と共に幅広が主流になっていることがデータでもくっきりと示されています。




このように、内装デザインのトレンドは時代とともに大きく変化しています。そのため、賃貸経営における原状回復リフォームでは、単に汚れた部分や壊れた部分を元に戻すだけでは不十分です。わざわざお金をかけて、余計に古臭さを際立たせてしまっているということも少なくありません。

効果的な空室対策を行うためには、内装材の色選びひとつにもこだわり、最新のトレンドを反映した選定が大切です。



2.入居者のこだわる設備 10年間の特徴的な変遷


アットホーム株式会社の調査によると、賃貸入居者の設備ニーズにもこの10年間で変化が見られます。「ユーザー動向調査 UNDER30 2023 賃貸編」「2013年首都圏 “UNDER30″私たちの選び方~部屋探しのプロセス&マインド~」では、「現在のお部屋を探す際に、最初から最後まで重視した設備」についての意識調査が行われました。





例えば、モニター付きインターホンは特に女性のニーズが強まっており、学生(女性)の重視率は15.6%から21.9%、社会人(女性)は18.8%から22.8%に上昇しました。この変化は、セキュリティ意識の高まりが影響していると考えられます。

インターネット無料接続は、多くの属性でニーズが高まっています。10年間の変化を見てみると、学生(男性)では10.5%から14.5%、学生(女性)では10.5%から18.5%、社会人(男性)は4.3%から9.5%、社会人(女性)は4.3%から17.6%に増加しています。大容量映像コンテンツの普及やテレワークの浸透により、高速インターネット接続が生活必需品に変わってきていることが読み取れます。

一方で、この10年間で重視度が低下している設備もあり、「収納スペースの広さ」「二口以上のコンロ(学生)」が代表的な例です。

例えば、学生の二口コンロ重視率は、特に女性学生での減少が激しく17.8%から13%に減少しています。収納スペースの広さもすべての層で減少が見られますが、特に女性の下落傾向が強く、学生(女性)で26.7%から20.4%、社会人(女性)で29.3%から18.5%と低下しています。

<二口コンロ>
・総菜などの購入傾向が増え、自炊の必要性が低下している。

<収納スペースの広さ>
・コンテンツのデジタル化が進み、DVDや書籍などの物理的な保管スペースが不要になっている。
・物価高や賃金の低さが影響し、「断捨離」「物を少なく持つ」「ミニマリスト」などに代表されるような「必要最低限の物を持つ」という価値観が広がっている

このように、消費者の設備ニーズや優先度は時代とともに変化しています。効果的な空室対策をおこなうためには、変化にアンテナを張った物件づくりが必要です。






株式会社市萬
中小企業診断士 宅地建物取引士 2級ファイナンシャルプランニング技能士


山村 諭史






内見数UP、早期申し込みを実現する!営業力UPのための空室対策


内見数UP、早期申し込みを実現する!営業力UPのための空室対策





「空室対策でリフォームをしたけれど、内見が少ない」
「早期申し込みにつなげるために、告知やプロモーションに力を入れたい」
こうした賃貸不動産の空室対策に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

本記事では、空室対策の中でも「募集」に焦点を当て、内見数を増やし、早期申し込みにつなげるための具体的な対策をまとめています。この記事のポイントを押さえることで、効果的な空室対策が進められるようになります。



≪空室対策における「営業力」とは≫


空室対策における「営業力」とは、物件を多くの人に知ってもらい、魅力を伝えて、最終的に申し込みにつなげる力のことです。

物件に設備投資し内装・設備をリニューアルしても、肝心の空室情報が検討者に効果的に伝わらなければ、内見や申し込みにはつながりません。情報が的確に検討者に届き、彼らのニーズに応える形で伝わることが大切です。

特に、入居者の購買行動や価値観は時代とともに変化しています。営業力を磨くためには、最新の入居者ニーズを反映させた対策が必要です。





≪営業力UPを実現する空室対策の基本≫


ここでは営業力が十分に発揮できているかどうかを判断するポイントを2つ紹介します。
まずは、これらのポイントに沿って現状の募集状況を確認し、不足している部分は強化・最適化を図る対策を講じましょう。



1.幅広く、最適な募集チャネルを選択できているか


最適な入居者を効率よく見つけるためには、幅広いチャネルを活用して空室情報を発信することが重要です。また、単に空室情報を発信するだけでなく、ターゲットとなる入居者層に適した媒体を選び、効果的にアプローチする必要があります。

アットホームの「オンラインでの住まい探しに関する調査 2023 賃貸編」によると、賃貸のお部屋探しをする人の70%以上が不動産ポータルサイトを利用しているという結果が出ています。

合わせて、リーシング・マネジメント・コンサルティング株式会社による「2024年賃貸不動産マーケットのお客様動向調査」では、不動産仲介会社への反響の多い媒体としてSUUMO、アットホーム、ホームズの3つの不動産ポータルサイトが上位に挙げられています。以上のことからも、これらのポータルサイトは、募集対策を行う上で必須のプラットフォームと言えるでしょう。




インターネットを活用して広く募集情報を届けることはもちろん、最低限、これら主要なポータルサイトへの掲載は欠かせません。これにより、多くの検討者に募集情報を届け、効果的な空室対策を講じることができます。



2.情報が正確、且つ過不足なく伝えられているか


物件を効果的にアピールし、内見や問い合わせにつなげるためには、その魅力を正確に、かつ十分に伝えることが大切です。

基本情報である住所、広さ、間取り、設備、賃貸条件など、入居希望者が判断するために必要な情報がしっかりと掲載されているかを確認しましょう。ただし、テキストだけではその魅力を十分に伝えるのは難しいため、写真や動画、アイコンなどの視覚的な要素を積極的に使うことが重要です。

こうした視覚情報を活用することで、物件の雰囲気がよりリアルに伝わり、入居希望者がイメージしやすくなります。

ちなみに、ハウスコム株式会社の『2023年度“部屋選び”に関する調査』によれば、不動産ポータルサイトやアプリの利用者が感じる主な不満点として、「物件の広さがイメージしづらい」(29.3%)、「物件の中身がイメージしづらい」(27.7%)、「物件の周辺環境がわからない」(27.0%)が上位に挙げられています。

この結果からも、入居後の生活をイメージするための情報提供には、まだまだ対策の余地があることが分かります。




視覚情報を活用した募集対策


こうした消費者の不満を解消し、物件をより魅力的にアピールするためにも、視覚情報の活用は重要です。



<視覚情報の活用例>
①モデルルーム写真や間取り図の活用

家具を配置したモデルルームの写真を掲載することで、入居者が実際の住まいをイメージしやすくなります。また、家具の配置を含めた間取り図があれば、部屋の広さやレイアウトをより具体的に伝えることができます。

②内見動画やパノラマ画像の活用

静止画だけでなく、動画や360度パノラマ画像を活用することで、お部屋の全体像をよりリアルに伝えることができます。
③周辺環境マップの作成

周辺の地図を作成し、交通アクセスや近くの生活施設(スーパー、学校、公園など)の情報をわかりやすく伝えることで、入居後の生活スタイルを具体的にイメージしやすくなります。



3.ターゲット層に合わせた情報発信


発信・プロモーションの内容がターゲットとなる入居者層にマッチしているかも重要なポイントです。単身者、DINKS層(共働き子なし世帯)、ファミリー層など、それぞれのニーズに応じた情報を提供する必要があります。
単身者・DINKS層向け

24時間営業のスーパーや、夜遅くまで営業している飲食店、総菜屋、ドラッグストアなど、仕事や遊びで忙しいライフスタイルを支える周辺施設のアピールが効果的です。
ファミリー層向け

スーパーやドラッグストアの豊富さに加えて、学校、保育園、塾、公園、病院といった子育てに役立つ施設のアピールが効果的です。安全な環境や治安の良さも、ファミリー層にとって大きな魅力となります。

ターゲット層に合った情報を提供することで、物件の魅力がより効果的に伝わり、内見やお問い合わせの増加が期待できます。


≪不動産仲介会社を見方につける+αの「営業力」の磨き方≫


オンライン内見や電子契約の普及が進む中でも、賃貸のお部屋探しにおいては、依然として不動産会社のサポートが欠かせません。空室対策として営業力を強化するためには、不動産会社が物件をスムーズに紹介できる環境を整えることが重要です。

リーシング・マネジメント・コンサルティング株式会社の「2024年賃貸不動産マーケットのお客様動向調査」では、『仲介会社が管理会社に求めるポイント』がまとめられており、不動産会社との良好な関係構築に役立つたくさんのヒントを読み取ることができます。

以下では、その具体的な方法をいくつか紹介します。





●営業に活用できる素材・ツールを積極的に提供


不動産仲介会社の営業担当者は、毎日多くの物件を案内・紹介しています。そのため、1つの物件の調査・提案準備に、十分な時間をかける余裕がありません。そこで、物件を優先的かつ効果的に紹介してもらうためには、営業ツールや資料をオーナー・管理会社側から提供するという対策が有効になります。

たとえば、物件の写真や動画、周辺マップなど、用意にひと手間掛かるような資料をあらかじめ提供しておけば、物件の魅力もスムーズに伝わり、仲介担当者がすぐに物件を紹介できる環境を整えることになります。
結果として、紹介頻度の向上が期待でき、効率的な空室対策となります






●入居者に不利な情報の事前開示


仲介会社が嫌うのは、契約直前で入居者に不利な情報が判明し、それまでの手間や苦労がムダになることです。設備の利用制限や初期費用、特殊な契約条件など、入居者にデメリットと感じる情報・条件がある場合には、はじめにしっかりと伝えておくという対策が大切です。

これにより、無駄なトラブルを防ぎ、不動産会社との信頼関係を強化できます。物件情報や取引の透明性を保つことは、営業担当者にとっても、お客様への紹介のしやすさに繋がります。




●レインズやatbbなどの物件情報共有システムには必ず登録


多くの不動産仲介会社は、募集情報を得るためにレインズやatbbといった情報共有システムを利用しています。これらのシステムに空室情報を登録することで、より多くの不動産会社に募集情報が共有され、紹介のチャンスが広がります。




ただし、これらのシステムの利用には不動産会社の協力が必要です。管理や仲介を依頼している会社が、正しく情報を登録しているか、しっかりと確認することが重要な対策です。





●業務支援システムへの連携を図る


不動産仲介会社の多くは、物件管理や顧客対応を業務支援システムを通じて行っています。空室情報をこれらのシステムに連携させることで、空室情報が目に留まりやすくなり、営業ツールや資料の共有もスムーズに行えるようになります。


仲介・管理を依頼している不動産会社に、事前に連携可能かどうかを確認し、積極的に活用してもらえるよう協力を依頼することが重要です。こうした連携が、物件の露出を高めると共に、営業担当者の仕事のサポートとなり、より多くの紹介につなげる空室対策になります。





●内見や空室確認・申し込みのWEB対応化


テクノロジーの進化に伴い、空室確認や内見申し込み、審査手続きのデジタル化(DX化)が急速に進んでいます。特に、入居希望者からの問い合わせは夜間に発生することも多く、これらに迅速に対応できる24時間リアルタイムのWEB対応が、今や必須となりつつあります。




WEB対応化の導入により、不動産仲介会社は時間や場所に関係なく物件の確認や内見の予約ができるようになり、利便性が大幅に向上します。また、問い合わせ対応の自動化やオンラインでの内見手続きの効率化によって、よりスムーズに内見から契約までの流れを作り出すことが可能になります。
WEB対応は競争力のある空室対策として積極的に取り入れるべき施策です。






株式会社市萬
中小企業診断士 宅地建物取引士 2級ファイナンシャルプランニング技能士


山村 諭史