賃貸アパート・マンション 空室対策の基本と進め方

「空室が一向に埋まらない」
「空室対策をどのように進めればよいか分からない」

不動産オーナーの中には、賃貸不動産の空室について、上記のようなお悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、賃貸不動産の空室対策について基本的な考え方から対策の進め方などのポイントをまとめています。

空室対策成功のポイントは、まずは空室の原因をしっかりと分析し、原因に応じて適切な対策を講じることです。この記事に書かれているポイントを抑えることで、効果的な空室対策を進めることができます。

他にも複雑な条件変更(借換えや条件変更、資産の組替え、物件購入、一部売却等)設定ができるよう汎用性を高めたり、誰もが簡単に作成できるようにするなどの改善を行っています。今後は全国の不動産会社や金融機関等への提供も検討しており、多くの不動産オーナーのお役に立てればと思っています。

 

≪空室対策は受け身では上手くいかない≫

「昔は苦労せずに埋まっていたのに、最近は空室が目立つようになってきた。なぜだろう?」

このように感じる不動産オーナーも増えているのではないでしょうか。

時代の変化と共に、不動産オーナーの置かれている状況も刻々と変化しています。その最たるものが「空室」です。これからの時代の空室対策は受け身の対策ではなく積極的な動きが求められます。

●空室問題は不動産オーナーにとって避けられない課題

人口や世帯数の減少に加え、新築住宅の継続的な供給が続く中、空室問題は今後も不動産オーナーにとって避けられない課題となります。

株式会社野村総合研究所が2024年6月に発表した報告によると、2043年には全国の空き家率が2023年の13.8%から約1.8倍となり、約25%に達すると予測されています。これは、全国的に空き家の増加が続くことを示しており、特に人口減少が著しい地方でその影響は顕著になることが予想されます。

これまでの右肩上がりの経済成長期には、待っているだけで自然と部屋が埋まる状況が続いていました。しかし、空室率が上昇する環境下では、不動産オーナーには従来以上に積極的な空室対策が求められます。

●時代と共に入居者ニーズが変化し技術も進化する

グローバル化やインターネットの普及といった情報網の進化により、技術革新や市場ニーズの変化がこれまでにない速さで進んでいます。

この変化は人々の生活スタイルに大きな影響を与えており、賃貸不動産経営にもその影響が及んでいます。

例えば、アットホームが発表した「2024年上半期 問合せが増えた条件・設備~賃貸編~」によると、賃貸物件の入居者からの問い合わせで増加した設備として、1位は「インターネット接続料無料」、2位は「宅配ボックス」が挙げられています。

この背景には、在宅ワークの普及や動画ストリーミングサービスの利用拡大による大容量通信需要の増加があり、それに伴い高速インターネット設備が必須インフラとなっていることが考えられます。また、共働き世帯の増加やネット通販の普及により、不在時でも荷物を受け取れる宅配ボックスの需要が高まっていることが要因と考えられます。

このように、時代と共に変化する入居者のニーズや技術進化に的確に対応することは、空室対策においてとても重要です。

 

≪空室対策の基本的な考え方と進め方≫

空室対策を成功させるためには、誰もが思いつかないような斬新で革新的なアイデアや、巨額の設備投資は必ずしも必要ではありません。

空室対策のセオリーを抑えつつ、原因をしっかりと分析し、適切な対策を打つことで効果的な空室対策は十分おこなうことができます。

●空室対策の基本的な考え方・セオリー

空室対策の実行は、「商品力」と「営業力」という2つの要素を軸に考えることをおススメします。
この2つの力が適切に発揮されてはじめて、空室は解消されます。逆に、空室が長く続いているということは、この2つの要素のどちらか、または両方が不足している可能性が高いと考えられます。

●空室対策における「商品力」とは

商品力とは、物件を探している人に「ぜひ入居したい!」と思える「物件自体の魅力づくり」のことです。

入居者の嗜好やライフスタイルは時代とともに変化し、建物設備も日々進化しています。そのため、入居者のニーズを正確に把握し、ニーズに応じた物件作りを行うことが、商品力を向上させるために不可欠です。

多くの場合、魅力づくりというとお部屋の中(専有部)の内装や設備だけが注目されがちです。しかし、商品力UPのためには、専有部だけでなく、物件の顔となる共用部でも清潔感や明るさを保ち、第一印象を良くすることが大切です。

●空室対策における「営業力」とは

営業力とは「物件の魅力をより多くの人に魅力的に伝え、入居申込に繋げる力」です。どれだけ商品力を高め、魅力的な物件を作り上げても、その魅力が適切に伝わらなければ、空室の解消には繋がりません。

特に現代の部屋探しはインターネットを中心におこなわれていますので、インターネットを通じた募集活動で営業力を高めることは基本中の基本です。

一方で、アナログな方法も依然として有効です。例えば、不動産会社の営業マンによる対面での物件紹介も、重要な営業力として力を発揮します。特に力のある不動産会社や営業マンと積極的に交流を図り、ご自身の空室を優先して紹介してくれるような関係づくりも重要です。

空室対策における営業力UPでは、適切なチャネルを選択肢し、いかに幅広い募集活動ができるかどうかが成功の鍵です。

 

≪空室対策の基本的な進め方3ステップ≫

空室対策にはさまざまなアイデアがありますが、やみくもにそれらを取り入れるのは費用対効果や労力の観点で得策ではありません。不動産賃貸経営は事業の一環であり、効果的な対策を取捨選択したうえで実行することが大切です。

先ずは空室となっている原因を適切に分析すること。そして、原因に応じた効果的な対策を洗い出し、最後に優先順位を定めて実行に移す。このように「原因分析」「対策の洗い出し」「実行の優先順位付け」という3つのステップに分けて空室対策を進めることで、より効果的な対策を打つことができます。

●まずは空室の原因を探る

空室対策の第1ステップは「空室の原因」を探ることです。この原因分析のステップでは、前述した「商品力」と「営業力」という2つの視点から原因を探ることをおすすめします。

以下は「商品力」と「営業力」のチェック項目です。まずはご自身の物件がこの2つの要素を適切に発揮できているか、確認しましょう。特にチェックリストに多くの抜けや不備が見受けられる要素は、空室の原因となっている可能性が高いです。

営業力

  • 不動産業者間の情報ネットワークに空室情報が登録されているか?
  • 一般消費者向けの不動産情報ポータルサイトに情報が登録されているか?
  • 図面や物件詳細に過不足なく、十分に情報が掲載されているか?
  • 不動産会社向けの報酬が適切に設定されているか?

商品力

  • 適切な賃貸条件が設定されているか?
  • 共用部の管理状況(清潔感、明るさ等)は良好か?
  • 専有部の内装・設備は良好か?

●原因に合わせて、空室対策を洗い出す

空室の原因となる要素が分析できたら、次は対策を洗い出しましょう。

おそらく、空室対策アイデアの中には「費用が掛かりすぎる」「時間が取れない」といった理由で、これまで採用しなかったものも含まれるでしょう。

但し、この洗い出しのステップでは、過去の経験や前例にとらわれず、とにかく考え得る全てのアイデアを自由に洗い出すことがポイントです。

たとえ今は実現の可能性が低いとしても、広く深い視野で物事を捉えることで、取捨選択や優先順位付けの精度が高まったり、後々に思いもよらない新たなアイデアに繋がる可能性があるからです。既成概念に囚われず、自由に思いつくままアイデアを出してみましょう。

●優先度を決めて実行に移す

空室対策のアイデアを洗い出したら、次は優先順位をつけて実行に移しましょう。

尚、優先順位をつける際には、それぞれのアイデアについて「効果」「費用」「時間」等の複数の評価軸を設けると、効果的・客観的に判断ができます。

実行の優先順位が最も高いのは、もちろん「低コストで、時間・労力が掛からず、高い効果が見込める空室アイデア」です。

なかには「高い効果が見込めるものの、コストや時間的な懸念があるアイデア」もあるはずです。このようなアイデアは、手間が掛かるゆえに他のオーナーが実行していない可能性が高く、もしも実現できれば大きな差別化に繋がる可能性もあります。

そのため、そのようなアイデアは中長期的な取り組みとして、実行の検討をしてみることをおススメします。

≪空室対策を「いつ」「誰と」行うのか≫

空室対策と聞くと、その「アイデア」に目がいきがちですが、それと同じくらい重要なのは「いつ始めるのか?」「誰と組むのか?」という観点です。

●空室対策を始めるタイミング

空室対策を始めるタイミングは、①入居中 ②解約通知後 ③退去後 の大きく3つに分かれます。
おそらく多くの不動産オーナーは③退去後に空室対策を始めることでしょう。

しかし、空室が増え競争が激しくなる昨今の賃貸市場では、「退去後」ではタイミングが遅く、せっかくの時間をムダにしてしまっている可能性があります。そのため、空室対策を始めるタイミングは、最低限「②解約通知後」から始めることをおすすめします。

実際、退去前の段階でも実施できる空室対策はたくさんあります。
例えば、営業力の強化を図るために「解約通知があった辞典で、提携の不動産会社に情報共有する」というのも有効な対策です。

退去情報を事前に情報共有しておけば、潜在的な顧客に事前に情報を案内し、早々の申込を得られる可能性があります。また、退去前に募集準備を進めておくことで、退去後すぐに募集を開始することができます。

このように退去後にかかわらず、退去前でもできる空室対策はたくさんあるのです。

●だれと組んで進めるか

空室対策を効果的に進めるには、信頼できるパートナー(不動産会社)と組むことも重要です。

インターネットの発達により、オーナーが自力で得られる情報やできることも増えてきています。しかし、まだまだ不動産会社しか得られない情報や利用できないネットワークもたくさんあります。

たとえば、募集活動のリアルな反響や最新の入居者ニーズ・動向は、現場で多くの入居者と接している不動産会社が最も把握しています。また、不動産会社には個人オーナーが利用できない独自の情報共有インフラが多数あります。

不動産会社と有効な関係性を築き、上手く活用することも、効果的な空室対策を進める上ではとても重要です。

 

≪空室対策・賃貸不動産再生のアイデア33選≫

不動産経営アカデミーでは「空無い大辞典」と称した賃貸経営再生のアイデアの一部を公開しています。その中には空室対策に繋がるアイデアも含まれております。
https://realestate-academy.jp/akinai/

当ページでは空室対策に繋がるアイデアの一部をご紹介します。

「あの部屋が空きましたよ」電話

空室対策の成功のためには、不動産会社との連携が欠かせません。特に、過去に内見や成約につながったことのある不動産会社・営業マンは将来的にも強力な募集パートナーになります。そのような強力なパートナーには、空室や退去の情報をいち早く共有することをおすすめします。

四季の花エントランス

建物エントランスは物件の第一印象を決める重要な場所です。
暗く・冷たい印象だと、内見者の印象もよくありません。植栽や四季折々のお花でエントランスを飾るだけでも、物件に華やかさが生まれ、印象が大きく変わります。

宅配ボックス

共働き世帯が増えたことにより、ネット通販の需要が高まっています。共用スペースに宅配ボックスを設置すると、日中留守にしている単身世帯や共働きの世帯でも安心して荷物を受け取る事ができます。

このように、時代と共に変化する入居者のニーズや技術進化に的確に対応することは、空室対策においてとても重要です。

株式会社市萬
中小企業診断士 宅地建物取引士 2級ファイナンシャルプランニング技能士

山村 諭史

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