アパートの空室が多い理由とは?原因分析のセオリーを解説



アパートの空室が多い理由とは?原因分析のセオリーを解説









空室はアパートやマンション経営において極めて重要な課題です。それは、空室が多いと収入が減少し、賃貸経営の安定性が損なわれるためです。

現在、市場にはさまざまな空室対策のアイデアが溢れています。しかし、効果的な対策を講じるためには、まず空室が多い理由を体系的に分析し、本質的な原因を明確にすることが不可欠です。

本記事では、空室の多いアパート・マンションの根本的な課題を特定し、具体的かつ実践的な分析方法を解説します。

 

 

<<空室が続く理由の分析方法とは?>>


 

空室が多い理由を特定する際には、「営業力」と「商品力」の2つの視点から分析すると、本質的な課題が見えてきます。

 

  • 商品力:「住みたい」と思ってもらえる魅力的な物件になっているか

  • 営業力:物件の情報や魅力が検討者に適切に伝わっているか


 

それぞれの観点で、具体的なチェックポイントを確認していきましょう。

 

 



 

 

 

 

<<商品力のチェックポイント>>


商品力のチェックは、物件が入居者にとって「住みたい」と思える品質を維持できているかを確認することです。

 

 

①賃貸条件が適正かどうか


 

賃貸条件は、物件の競争力を左右する重要な要素の一つです。特に近年では、インターネットの普及により、借主も市場相場を容易に把握できるようになったため、適正な賃貸条件の設定がこれまで以上に重要になっています。賃貸条件(家賃、敷金・礼金など)が市場相場と適切に合致しているかを確認することが重要です。

 

<確認ポイント>

  • 不動産会社へのヒアリング:複数の不動産会社に意見を聞き、客観的な相場情報を収集

  • 不動産ポータルサイトで競合物件をチェック:近隣の同様物件と比較し、条件に大きな差がないか確認

  • 相場情報サイトの活用:エリア別、駅別の相場データを参照し、適正な価格を判断


 

 

 

 

②共用部の管理・整備が整っているか


 

入居者に選ばれるためには、共用部の清潔感と明るさを確保することが不可欠です。特に、入居者の利用頻度が高く目につきやすいエントランス、ごみ置き場、駐輪場は重点的にチェックしましょう。

 

<確認ポイント>

  • ゴミ置き場にゴミが散乱し、不衛生な状態になっていないか

  • 駐輪場が乱雑になっておらず、放置自転車が多数ある状態になっていないか

  • エントランスが暗く、汚れていたり、不衛生な状態になっていないか


 



 

 

 

③専有部の内装・設備の競争力が確保されているか


 

設備の性能は日々向上し、入居者のニーズも時代とともに変化しています。築年数が15年以上経過している場合、設備や内装が時代遅れになっていないか、競争力を維持できているかを慎重に確認する必要があります。また、最低限の清潔感を保つことは絶対条件です。

 

<確認ポイント>

  • 新築時の内装デザインをそのまま維持し続けるような、原状回復になっていないか

  • 汚れやにおいが残っていないか、ゴミが放置されて不衛生な状態になっていないか


 



 

以上が商品力を確認するためのチェックポイントです。商品力に大きな問題がある場合、たとえ情報が入居検討者に届いていたとしても、検討対象から外れてしまったり、契約に結びつかない可能性が高くなります。
いきなり大規模なリノベーションを実施するのではなく、まずは上記のチェックポイントをもとに最低限の商品力が維持されているかを確認することが重要です

 

 

 

 

 

 

<<営業力のチェックポイント>>


営業力が不足していると、どれだけ魅力的な物件でも入居希望者に情報が届かず、結果として内見や申し込みにつながりません。効果的な情報発信と不動産会社との緊密な連携が不可欠です。

 

 

①不動産業者間の情報ネットワークへ登録されているか


 

現在、不動産業者間の情報ネットワークが発達し、空室の募集情報が迅速に共有される環境が整っています。これにより、一つの不動産会社だけでなく、他の不動産会社を通じて広く顧客に紹介される仕組みが構築されています。そのため、不動産業者間の情報ネットワークに正確かつ適切に情報が登録されているかをしっかりと確認し、最大限活用することが重要です。

 

<確認ポイント>

  • レインズに物件情報が登録されているか

  • at homeやsuumoなどの不動産ポータルサイトの業者間ネットワークに登録されているか


 



 

 

 

 

②不動産ポータルサイトへの適切な掲載がなされているか


 

入居者の多くは、まずインターネットを通じて物件情報を検索し、問い合わせや内見を申し込む傾向があります。特に近年は、オンラインでの情報収集が主流となっており、インターネット上での訴求力がますます重要になっています。そのため、SUUMOやHOME'Sなどの大手不動産ポータルサイトへの掲載は不可欠です。

 

<確認ポイント>

  • 主要ポータルサイトへの掲載がされているか


 

 

 

 

③物件図面や掲載情報に正しく、十分な情報が掲載されているか


 

物件の魅力を最大限に伝えるためには、募集図面や掲載情報に過不足のない、正確かつ魅力的な情報が含まれていることが重要です。文章によるテキスト情報はもちろん、写真などの視覚的な情報も大きな役割を果たします。

 

<確認ポイント>

  • 写真が十分に掲載されているか

  • 物件の魅力が分かりやすく、具体的に記載されているか

  • 設備情報に不足や誤りがないか

  • 物件までのアクセスや周辺施設の情報が適切に掲載されているか


 



 

 

 

④仲介会社向けの報酬(業務委託料)は適正か


 

不動産仲介会社は仲介手数料収入を主要な収益源としています。そのため、同条件の物件であれば、業務委託料が設定されている物件を優先的に紹介する傾向があります。逆に、業務委託料が設定されていない物件は、他の業務委託料付き物件より優先度が下がる可能性があります。

 

<確認ポイント>

  • 周辺の物件の業務委託料がどの程度なのか調査する

  • 競争力のある業務委託料が設定されているか


 
 
 




株式会社市萬
中小企業診断士 宅地建物取引士 2級ファイナンシャルプランニング技能士


山村 諭史




不動産経営とは?種類とそれぞれのメリット・デメリットを紹介




不動産経営とは?種類とそれぞれのメリット・デメリットを紹介








不動産経営の基本



不動産経営とは、不動産を他人に貸し出して賃料収入(インカムゲイン)を得る、または不動産価値の上昇による売却益・資産増加(キャピタルゲイン)を狙う事業のことを指します。さらに、副次的な効果として節税効果(タックスセービング)を狙う手法もあります。

 

不動産経営の最終的な損益は、主にインカムゲインとキャピタルゲインの総和によって決まりますが、どちらを重視するかは、個々の経営スタイルや目的によって異なります。一概に正解があるわけではありません。

 

また、不動産経営による節税は有効な手段ではありますが、節税を最優先に考えるあまり、インカムゲインやキャピタルゲインを軽視した投資を行うと、結果的にトータルで大きな損失を被るリスクがあります。本末転倒な結果に陥らないよう、不動産経営では以下の3つの損益のバランスを十分に考慮し、戦略的に運用することが重要です。

 



 

 

 

3つの収益:インカム・キャピタル・節税



<<インカムゲイン(賃料収入)>>


不動産経営の基本的な収入源は、場所やスペースを貸し出すことによる賃料や地代収入です。これらの収入から、修繕費や固定資産税、広告宣伝費などの経費を差し引いた純利益が事業の収益となります。このように、物件の保有期間中に継続的な収益を生み出すことを目的とするのが、不動産経営における**インカムゲイン**です。

不動産経営における収入は他の事業、例えば小売業や飲食業などと比べて、安定的で見通しが立てやすいということが特徴です。また、管理を管理会社に任せることができるため、不動産経営における賃料収入を、本業における副収入としたり、年金代わりの基礎収入として活用する方が居ます。

 

<不動産経営における主な経費>



  • 修繕費:内装や設備の維持管理や修繕にかかる費用

  • 固定資産税:不動産を所有する際にかかる税金

  • 広告宣伝費:入居者募集やテナント誘致のために発生する費用

  • 管理費:管理会社への契約管理や送金管理等を依頼するために発生する費用

  • 借入利息:不動産の購入や設備投資に融資を利用した場合に発生する費用


 

 

 



<<キャピタルゲイン(売却益)>>


不動産の価格は、経済状況の変化や都市開発などの周辺環境の変動といった外的要因に加え、リフォームや建て替えなどの内的要因によっても変動します。
この価格の上昇を活用して利益を得ることを目的とするのが、不動産経営における**キャピタルゲイン**です。

 

<キャピタルゲインの具体例>



  • 都市開発が見込まれるエリアに物件を購入し、賃貸しながら将来的な値上がりを狙う

  • 土地を購入し、建物を建設した後に売却して差益を得る

  • リノベーションや用途変更を行い、不動産価値を高めた上で売却する


 

 

 

 

<<節税効果(税負担の軽減)>>


不動産経営では、税務上のメリットを活用することで節税を図ることができます。不動産投資家のなかには、インカムゲインやキャピタルゲインに加えて、この節税効果を積極的に活用する手法を取るケースもあります。

 

<節税の具体例>



  • 減価償却の活用による所得税・法人税の軽減:建物や設備の減価償却費を計上することで、課税所得を抑え、税負担を軽減できます。

  • 現金との評価額差を活用した相続税対策:不動産は現金よりも評価額が低く算定されるため、相続時の税負担を抑える効果があります。


 

節税は不動産経営において重要な要素の一つですが、節税のみを目的にすると本来の収益性を損なう可能性があります。インカムゲインやキャピタルゲインとのバランスを考慮し、戦略的に運用することが重要です。

 

 

 

 

 

不動産経営の種類



不動産経営にはさまざまな種類があり、それぞれに異なるメリットとデメリットが存在します。そのため、不動産経営を通じて何を達成したいのかを明確にし、自身の目的に合った経営スタイルを選択することが成功のカギとなります。

 

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① 居住用建物賃貸


 

✅ 強み



  • 需要が比較的安定しており、収入の見通しを立てやすい(急激な需要変動が少ない)

  • 金融機関からの融資を受けやすく、資金調達が比較的容易

  • 相続税の節税効果が比較的高い(建物の評価減を活用しやすい)


 

❌ 弱み



  • 設備更新や修繕コストが継続的に発生し、維持管理の負担が大きい

  • 少子高齢化や新築物件の増加により、エリアごとの格差が拡大し、競争が激化する可能性がある


 

<具体例>

  • アパート

  • マンション

  • 貸戸建


 



 

 

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② 事業用建物賃貸


 

✅ 強み



  • 契約期間中の修繕負担が少なく、収益率が高い(居住用建物賃貸と比較した場合)

  • 優良テナントとの長期契約が成立すれば、安定した収益が見込める

  • 立地や経済動向によっては、賃料の上昇や資産価値の向上が期待できる

  • 相続税の節税効果が比較的高い(建物の評価減を活用しやすい)


 

 

❌ 弱み



  • 立地や景気、業種のトレンドに大きく左右されるため、収入の変動リスクが高い

  • 物件の用途が限定されるため、他の用途へ転用しにくい


 

<具体例>

  • 貸店舗

  • 貸事務所

  • 貸工場・倉庫


 



 

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③ 土地賃貸



✅ 強み



  • 初期投資が少なく、比較的低コストで始められる

  • 建物の管理が不要で、維持費や修繕コストがほとんどかからない

  • 一部売却や建物建築など、他の用途への転用や活用がしやすい


 

❌ 弱み



  • 相続税評価額が割高になりやすい(建物ありの不動産と比較して)


 

<具体例>

  • 駐車場

  • 資材置場

  • コインパーキング


 



 

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④ 借地権の底地


 

✅ 強み



  • 建物の管理が不要で、維持コスト負担がすくない

  • 10年単位の長期契約が多く、安定的な収入が見込める


 

 

❌ 弱み



  • 収益率が低い

  • 借地権の権利が強く、他の用途への転用や再活用が困難

  • 相続税評価額が割高になりやすい(時価と比較して)


 

<具体例>

  • 事業用借地

  • 居住用借地


 

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⑤ その他の特殊用途賃貸


✅ 強み



  • エリアやトレンドに合った活用法を見つければ、高収益や安定した収入が期待できる

  • 競争が少ない分野では優位性を持ちやすく、ニッチ市場での収益化が可能

  • 一部の用途では初期投資が比較的少なく、低コストで運用を始められる


 

 

❌ 弱み



  • 特殊用途のため、需要が限定的で市場変動の影響を受けやすい(長期的な見通しが立てにくい)

  • 他の賃貸用途と比べて専門知識や管理ノウハウが求められるため、運営の難易度が高い


 

<具体例>

  • トランクルーム

  • バイクガレージ

  • 貸農園・シェア畑

  • 太陽光発電用地の賃貸

  • 民泊・短期賃貸(マンスリーマンション含む)


 
 
 




株式会社市萬
中小企業診断士 宅地建物取引士 2級ファイナンシャルプランニング技能士


山村 諭史




武蔵野大学との産学連携でビニールクロスの使用量削減によるCO2排出削減量を数値化



武蔵野大学との産学連携でビニールクロスの使用量削減によるCO2排出削減量を数値化











15年前より原状回復時のクロスの部分張替えを実施



当社は賃貸物件の原状回復時のクロスの全面張替えに疑問を持ち、15年前から工事会社の協力を仰ぎながらクロスの部分張替えを実施してきました。

全面張替えと比較して、張替えが必要な箇所、洗浄や部分補修で済む箇所を確認して張替え作業を行うことは手間がかかることではありますが、工事費を抑えることができるため、オーナー様にもメリットがあると考えたからです。









武蔵野大学との産学連携でクロスのCO2排出量を可視化



そのような中、クロスの使用量を控えることがCO2排出量削減につながり、近年課題となっている地球環境問題への対策に貢献できるのではないかと考えました。もし、ビニールクロスの使用を削減することでCO2削減に大きな効果があるのであれば、当社だけでなく不動産業界全体で取り組んでいきたいという思いもあり、武蔵野大学との産学連携で、ビニールクロスのCO2排出量を可視化する取り組みに着手。

検証は実際に原状回復工事を行う物件を対象に実施しました。ビニールクロスの使用量だけでなく、廃棄の際に発生する輸送などに対するCO2排出量も加味して算出しました。

磯部先生をはじめとする武蔵野大学の研究室の皆さんが作成したツールを使用し算出した結果、原状回復時のビニールクロスの使用を1㎡抑えることで、0・412kg-CO2の排出量削減に貢献できるということが確認できました。







51・40㎡の住戸のクロス張替え量25%削減で18・5kg-CO2削減



当社ではクロスの汚れの状況を見て張替え、洗浄、塗装、対応無しの4パターンで、次の空室募集に問題が無いことを前提に決めていきます。今回の物件は間取図のピンクの部分の張替えは不要と判断。約45㎡分のクロスを張替えなしで対応し、18・5kg-CO2の削減につながりました。この値は7・9リットル分のガソリン使用削減と同効果になります。乗用車であれば約80km走行分を削減したのと同じ削減効果です。

ほとんどの賃貸物件は壁紙にビニールクロスが使用されています。特にファミリー物件など、部屋数の多い物件ではその使用量が多く、かつ、部屋ごとに張替えの有無を判断できることから、大きな削減効果を出せると考えます。

この部分張替えの取り組みが不動産管理業界に広まることで、多くのCO2削減につながると考えられます。今後はこれを業界に広く周知し、この取り組みを広めていく計画です。
















株式会社 市萬

宅地建物取引士 公認 不動産コンサルティングマスター 2級ファイナンシャル・プランニング技能士

中澤 一世




大規模修繕成功の第一歩は建物劣化診断から



大規模修繕成功の第一歩は建物劣化診断から











大規模修繕成功の第一歩は建物劣化診断から



建築費の高騰や空室の増加、環境への配慮などから、近年、建物の長期活用が求められるようになりました。それは、賃貸物件も例外ではありません。

建物を長期活用するために重要なのが大規模修繕です。ですが、工事業者に見積もりを頼むとかなりの金額が提示され、実施をためらってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでお勧めしたいのが、見積もりを取る前に、建物の劣化診断をすることです。

私たちも病気になったとき、いきなり手術は行いません。さまざまな検査を行ったうえで、治療方針を決定します。それと同じで、建物もきちんと検査をし、どこが悪いのか、どう悪いのかを確認したうえで、必要な箇所に必要な修繕を行うわけです。









当社では、診断後の報告書に劣化箇所の評価を左記の3段階で記載しています。評価によって緊急度がわかるので、修繕の優先順位をつけ、必要なところから予算に合わせた修繕が可能です。

建物の築年数が10年を超えている、雨漏りや外壁のタイルが欠けてきた、そのような状況の建物をお持ちであれば、大規模修繕を行う前に建物劣化診断を実施し、計画的な修繕で長期活用を目指しましょう。








大規模修繕 現地確認の様子



株式会社 市萬 賃貸事業部 宅地建物取引士


宮澤 慎之介





空室対策にリノベーションを活用する方法とは?進め方や成功事例を解説



空室対策にリノベーションを活用する方法とは?進め方や成功事例を解説






「空室対策でリノベーションを検討したい」
「リノベーションをしたいが、何から始めればよいかわからない」

 

賃貸経営において空室対策は重要な課題ですが、単なる原状回復ではなく、戦略的なリノベーションを行うことで、入居率の向上や賃料アップが期待できます

 

本記事では、賃貸不動産の空室対策としてのリノベーションにフォーカスし、具体的な進め方や成功事例をご紹介します。リノベーションの効果を最大限に高めるポイントを押さえて、収益性の向上につながるリノベーションを実現しましょう。

 

 

リノベーションは空室対策に有効な手段


 

リノベーションとは、既存の建物に対し大規模な改修を施し、デザインを刷新したり、設備機能を向上させたりすることを指します。
空室対策としてリノベーションを行う最大の目的は、 物件の魅力を向上させ、入居希望者に「住みたい」と思われるようになることです。数ある空室対策の中でも、リノベーションは募集期間の短縮だけでなく、家賃アップも期待できる効果的な施策のひとつです。

 



近年では 「リノベーション」という言葉の認知度が高まり、リノベーション物件に対する入居者の関心も高まっています。そのため、「リノベーション済み物件」として募集を行うことで、他の物件との差別化が図れ、より良い印象を与えることができます。

 

 

費用対効果を考慮した空室対策リノベーションの進め方


 

賃貸物件の空室対策リノベーションには、通常の原状回復工事に加えて追加の投資(費用)が発生します。しかし、賃貸経営は事業であるため、かけた費用は適切に回収し、収益向上につなげることが重要です。無駄な投資を避け、最大限の効果を得るためには、計画的にリノベーションを進めることがポイントとなります。

 

ここからは費用対効果を考慮した空室対策リノベーションの進め方を解説します。

 



 

 

①ターゲット層・ペルソナの設定


 

まず、どのような入居者をターゲットとするのかを明確にすることが重要です。ターゲット層によって、設備・間取り・内装デザインの方向性が大きく変わります。
ターゲット層を設定する際は、次のような方法で入居者ニーズを分析しましょう。

 

  • 現入居者の属性を調査(年齢・家族構成・職業・年収・勤務先など)

  • 過去の内見者、検討者の属性を確認

  • 近隣の競合物件の入居者層をリサーチ


 

 

②ターゲットに合わせたリノベーション方針の策定


 

ターゲット層が決まったら、それに合わせた空室対策リノベーションの方向性を策定します。リノベーションには以下のような種類や選択肢があります。

 

  • 専有部リノベーション(住戸内のリノベーション)

    • 内装のリニューアル(クロスやフローリングの貼り替え、デザイン変更)

    • 間取り変更(和室から洋室、2DK→1LDKなど)

    • 設備更新(キッチン、浴室、トイレなどの交換・グレードアップ)




 

  • 共用部リノベーション(建物全体の価値向上)

    • 外壁やエントランスの改修(塗装、タイル張り替え、デザイン変更)

    • 共用施設の改善(郵便受けや宅配ボックスの設置、照明の変更)




 

 

③概算で採算性の確認


 

リノベーションの方向性が決まったら、すぐに詳細な見積もりを取るのではなく、 概算費用を基に採算性を確認 しましょう。リノベーションには通常の原状回復工事に加えて投資(費用)が必要ですが、その費用を適切に回収できるかどうかがポイントです。

 

以下の計算式を活用すると、費用対効果を簡単に試算できます。当社では、投資利回りが12%以上を一つの目安としています。

 



 

また、 税引後のキャッシュフローシミュレーション を行い、時間経過を考慮した採算性を確認することも重要です。もし採算性が著しく低い場合は、リノベーションの方針を再検討し、より収益性の高いプランに変更しましょう。

 

 

④詳細見積り・プラン設計


大まかな採算性の確認が取れた段階で、詳細のプラン設計と見積りを開始しましょう。

 

 




 

 

専有部リノベーション事例


 

和室の柱の風合いを活かした和モダンリノベーション


 

<物件概要>

  • 構造等:木造2階建

  • 建築時期:昭和51年6月


 

<リノベーション内容>

古めかしさが目立っていた和室を、あえて和の風合いを活かしたカラーデザインでリノベーション。和室から洋室へ変更し、紺色のアクセントカラーとダークブラウンの色合いを取り入れることで、落ち着きのある古風な和の趣を演出。和の魅力を活かしながら、現代のライフスタイルにも馴染む空間へと生まれ変わるリノベーションを実施しました。

 

<結果>

  • 月額賃料27,000円アップ


 

<BRFORE>



 

<AFTER>



 



 

 




 

 

無垢材の床を使用し、飽きのこないナチュラルテイストのリノベーション


 

<物件概要>

  • 構造等:鉄筋コンクリート造3階建

  • 建築時期:昭和49年3月


 

<リノベーション内容>

築50年が経過し、内装の古さが目立っていた物件をリノベーション。無垢材の床と白い壁紙を組み合わせることで、温もりのあるナチュラルテイストの空間に生まれ変わらせました。さらに、キッチンやトイレなどの水回り設備も一新し、快適性を向上。シンプルでありながら上質なデザインが、長期的な入居を促す住まいを実現しました。

 

<結果>

  • 工事中に入居申し込みを獲得

  • 月額賃料 約70,000円アップ


 

 

<AFTER>



 



 

 




 

 

共用部リノベーション事例


 

周辺の緑からカラーを採用し、自然と調和する物件に


 

<物件概要>

  • 構造等:軽量鉄骨造3階建

  • 建築時期:平成4年3月


 

<リノベーション内容>

建物全体をホワイトを基調としたカラーリングに変更し、アクセントとして周辺の緑から抽出したグリーンを玄関ドアや階段に採用。周辺の自然と調和しながらも個性が際立つリノベーション物件へと生まれ変わりました。

 

<結果>

  • 入居率が90%前半から97%へ上昇

  • 月額賃料が2,000~4,000円アップ


 

<BEFORE>



<AFTER>



 



 

 




 

 

 

木をあえて残した、木造の温もりを感じる和モダン共用部リノベーション


 

<物件概要>

  • 構造等:木造2階建

  • 建築時期:昭和51年6月


 

<リノベーション内容>

木造ならではの風合いを活かし、和モダンな共用部リノベーションを実施。外壁は漆喰風の白に塗装し、窓や共用部の目隠しには蔵造り風の木製格子を採用。和の趣を際立たせるデザインに仕上げました。

 

<結果>

  • 月額賃料が27,000円アップ


 

<BEFORE>



 

<AFTER>



 

 




 

 

カラフルな4色木目調フェンスでかわいらしい共用部リノベーション


 

<物件概要>

  • 構造等:木造2階建

  • 建築時期:昭和62年4月


 

<リノベーション内容>

30代前後の若い夫婦をターゲットに、柔らかな4色のカラーバリエーションを取り入れた木目調の意匠フェンスを設置。ポストや物件の表示板も統一感のあるデザインに変更し、温かみのある印象をリノベーションで演出しました。

 

<結果>

  • 月額賃料10,000~20,000円アップ


 

<AFTER>



 






株式会社市萬
中小企業診断士 宅地建物取引士 2級ファイナンシャルプランニング技能士


山村 諭史





空室対策で陥りがちなミスとは?失敗を防ぐための回避策を解説

空室対策で陥りがちなミスとは?失敗を防ぐための回避策を解説










賃貸不動産の空室問題に悩む不動産オーナーは少なくありません。空室の増加は収益の減少に直結するため、手早く適切な対策が必要です。

 

本記事では、空室対策で陥りがちなミスと、その回避策を解説します。無計画な対応を避け、戦略的に空室対策を進めることで、より高い成果を得ることができます。

 

 

 

1.空室対策の最終ゴールを明確にしない


 

空室対策を進める際には、「いつまでに、どのような状態を目指すか」というゴールを明確に設定することで、より効果的な具体的アクションを導き出すことができます。

単に「空室を埋めたい」と考えるだけではなく、

 

  • 家賃水準はいくらを目標にするのか

  • 募集期間や入居率はどの程度を目標にするのか


 

といった具体的な数値目標を設定することで、実行すべきアクションが明確になります。

 

例えば、「家賃を前回入居者から10,000円アップを目指し、募集から成約までの期間は2ヶ月とする」という目標を設定した場合、

過去の募集事例を基に目標家賃での成約見込みや想定募集期間を推定できます。その情報をもとに、

 

  • 家賃を向上させるためのリフォーム計画を検討する

  • 広告戦略や不動産会社への手数料設定を最適化する


 

といった具体的な計画を立てることが可能です。

空室対策を検討する際は、場当たり的なアイデア出しから始めるのではなく、まず 最終ゴールを明確にする ことが大切です。これにより、無駄なコストや時間を省き、より効果的な対策を講じられます。

 



 

 

 

 

2.原因を検証せずに空室対策を進める


 

空室対策の問題を抱えている場合、原因を分析せずに対策を講じても、十分な効果は期待できません。

例えば、「なかなか内見が入らない」という問題に対し、安易に「家賃を下げよう」「リフォームをしよう」といった表面的な対策だけでは、無駄なコストが発生する可能性があり、根本的な解決にはなりません。

 

空室対策を効果的に進めるためには、「商品力」と「営業力」 の2つの視点で原因を分析することをお勧めします。

 

  • 商品力:「住みたい」と感じてもらえる魅力のある物件になっているか

  • 営業力:物件の情報や魅力が検討者に十分に伝わっているか


 

 



 

 

以下にそれぞれのチェックポイントを揚げました。是非参考にしてみてください。

 

<商品力>のチェックポイント

  • 賃貸条件(家賃、敷金・礼金など)が市場に合っているか

  • 共用部の管理状況(清潔感・明るさ)は十分か

  • 専有部の内装・設備は競争力があるか


 

<営業力>のチェックポイント

  • 不動産業者間の情報ネットワークに空室情報が登録されているか

  • 不動産ポータルサイトに情報が適切に掲載されているか

  • 物件図面や掲載に過不足や誤りがないか

  • 仲介会社向けの報酬(広告料)が適切に設定されているか


 

尚、これらの原因分析を進める際は、提携している仲介会社や管理会社からのヒアリングも重要です。

情報交換を密に行い、本質的な問題を見出すことで、より効果的な空室対策を講じることができます。

 

 

 

 

 

3.複数の対策を検討せず、優先順位を付けない


 

空室対策にはさまざまな方法がありますが、それぞれ費用や効果が異なります。 その場の思いつきや感覚で対策を選ぶのではなく、

 

  1. 考えられる対策を洗い出す

  2. 費用対効果を比較する

  3. 優先順位を決めて実行する


 

というプロセスが重要です。

 



 

例えば、「空室期間を○○日以内に抑える」という目標を設定し、それに対する課題として「原状回復工事に時間がかかりすぎている」という点が挙げられたとします。

この場合、次のような解決策が考えられます。

 

<考えられる対策>

  • リフォーム事業者を変更する

  • リフォームプランを事前に定型化する

  • 工事に必要な設備・資材をあらかじめ確保しておく

  • 解約予告期間を長めに設定し、工事スケジュールを前倒しする

  • 原状回復と並行して募集を進める


 

各対策のコストと効果を比較し、最適な方法を選ぶことが重要です。

 

例えば、「原状回復工事と並行して募集を進める」や「リフォームプランの定型化」は、仕組み次第で低コストで実現可能です。一方、「解約予告期間を長く設定する」ことは、募集や契約に悪影響を与えるリスクもあるため、 効果とリスクのバランスを考慮しながら最適な施策を選択する必要があります。

 

空室対策の打ち手を決める際には、場当たり的に決めるのではく、掛かるコスト・費用と効果を考慮して検討しましょう。

 

 

 

 

4.空室対策の効果・成果を記録しない


 

空室対策を効果的に進めるには、実施した対策がどれだけ成果を出したかを定期的に評価し、記録しておくことが重要です。

蓄積した記録は、今後の空室対策を検討するうえでの貴重な財産となります。

 

<成果測定のポイント>

  • 数値での評価(例:入居率、空室期間、募集期間、広告反響率 など)

  • 定性的な評価(例:入居者や不動産会社からのフィードバック など)


 

記録を基に対策の効果を分析し、その結果を活かすことで、次回の空室対策の精度を高め、効果を最大化できます。

都心周辺エリアのファミリータイプ中心に賃料が上昇中



都心周辺エリアのファミリータイプ中心に賃料が上昇中








分譲マンション価格の上昇が賃貸相場にも影響を与えている


ここ数カ月、一部エリアの賃貸不動産の賃料が上昇しています。特に、都心部周辺エリアの好立地のファミリータイプについては、その傾向が顕著に表れています。


賃料アップの要因はいくつかありますが、その一つが分譲マンションの価格上昇です。今や東京23区の新築分譲マンションの平均価格は1億円を超えました。そのため、購入を考えていた層が購入を諦め、賃貸に流れてきているのです。都心の利便性を求めるパワーカップルなどが立地の良いエリアで質の良い賃貸マンションを求めるようになっており、賃料を高くしても借手が付くようになりました。










賃料の上昇が顕著なのは好立地、ハイグレード賃貸


賃料がアップしている物件の特徴を見てみると、立地の良いエリア、分譲マンション仕様の高品質な賃貸物件となっています。

物価上昇が見込まれる中、このような状況を踏まえ、当社ではより積極的な賃料アップの提案をしており、高値が狙える物件については、次のようなことを推奨しています。

①思い切った賃料設定をする

②改良工事で共用部、専有部を分譲マンションに近づける

③更に、今後賃料の上昇が見込まれる物件は定期借家契約とし、賃料上昇に柔軟に対応できる状態にしておく

実際、このような対策を行うことで、左にあるように高い賃料を実現した物件もあります。

いずれにしても、今後の為替変動を注視する必要がありそうです。









ただし、このような対策を取れば全ての賃貸物件の賃料がアップするかというと、残念ながらそうはいきません。ですから、採算性も考えながら、可能性のある物件に絞って取り組むことをおすすめします。まずは当社にご相談ください。









株式会社 市萬 賃貸事業部

二級建築士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、JSHI公認ホームインスペクター(合格者)

下田 晃大


長期視点で最適なご提案をいたします


「築年数が古い」「駅から遠い」など、さまざまな問題を抱えた賃貸不動産の課題分析および満室化に向けた提案や、建物長期活用のための建物メンテナンス提案を行う。







円安による不動産経営への影響



円安による不動産経営への影響









2012年頃は1ドル80円前後だったドル円相場は、昨年夏には倍の160円前後となり、現在も140円前後と以前に比べて円安水準が続いています。トランプ政権となり円安は緩和されつつありますが、まだまだ為替相場の先は見通せない状況です。そして、この円安は不動産経営にさまざまな影響を与えています。


円安による影響には、次のようなものが挙げられます。輸入資材の上昇による修繕費や建築費の上昇、海外からの投資増加による好立地の不動産価格の上昇、それに伴う好立地の分譲マンション住戸の賃料上昇などです。










円安は不動産経営にとってマイナスなだけではなく、プラスの面もあります。ですから、為替変動が不動産経営にどのような影響を与えるのかを把握しておくことが大切です。不動産の売買においては経済情勢をみながら買いのタイミングを見極め、慎重に行動しましょう。また、賃貸経営においては、円安による輸入建築資材価格の上昇で、物件の維持管理に必要な修繕やリフォーム工事の費用が当初想定していたより高額になる可能性があります。そのため、計画の変更を検討する必要があるかもしれません。


いずれにしても、今後の為替変動を注視する必要がありそうです。











株式会社 市萬 資産コンサルティング部

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

笠原 陽子







東京工芸大学工学部建築構法研究室と共同で ワンルームマンション長期活用の研究を実施



東京工芸大学工学部建築構法研究室と共同でワンルームマンション長期活用の研究を実施








建物長期活用を学生と考える産学連携の結果発表会を実施


当社では建物を長期活用するための取り組みの一つとして、2つの大学と産学連携を行っています。


一つは武蔵野大学工学部サスティナビリティ学科の学生と行っている「原状回復における脱炭素化の研究」。そして、もう一つが東京工芸大学工学部建築構法研究室の学生とともに行っている「ワンルームマンションの間取り変更を伴う長期活用に関する研究」です。


この度、東京工芸大学工学部建築構法研究室との研究結果がまとまり、オーナー様に向けたプレゼンという形で発表会を行いました。



ワンルーム賃貸の未来をつくる住戸を繋げて1住戸に再生


メインターゲットである若者減少に伴いワンルーム(1R)のニーズは大きく低下すると考えられており、その対策が急務です。その課題に取り組んだのが、東京工芸大学建築デザイン分野森田研究室との研究です。1Rの未来を見据え、2~3住戸を繋げて1住戸とし、新たな価値を作ることで長期活用を考えました。


学生との顔合わせは昨年4月。当社管理物件を研究対象とし、現地見学や当社にてミーティングを実施し、どのようなプランが作れるのか?採算はとれるのか? 学生とともに考えました。間取りプランは学生が、改修概算費用や賃料、事業性評価のためのキャッシュフローシミュレーションは当社で行いました。








学生ならではのプラン提案に1Rの将来性を感じる


学生のプランには広々とした土間や窓際にヌック(こじんまりした空間)を設けるなど、+αの空間を取り入れた提案が多く見られました。また、共用部を専有部に取り入れ、広さを確保するプランなど、学生ならではの発想が見て取れました。
物件オーナーからも「学生の斬新なプランが参考になったので、前向きに考えてみたい」というお言葉をいただいています。
今後の展開が楽しみです。











株式会社 市萬

宅地建物取引士 公認 不動産コンサルティングマスター 2級ファイナンシャル・プランニング技能士

中澤 一世







複数の診断書を活用し 賃貸経営を長期間成功に導く



複数の診断書を活用し 賃貸経営を長期間成功に導く









定期的な清掃や修繕、入居者対応など、やることが多い賃貸経営。もちろん、日々の対応は重要ですが、長期的な視点で賃貸経営を見ることも重要です。


例えば、いつ大規模修繕が発生するのか、費用は?キャッシュフローが厳しくなるのはいつ頃か、そもそも不動産経営は上手くいっているのか、相続税はいくらなのか。そのようなことを事前に知ることで、対策を考えることができます。


当社では2年前からさまざまな診断を活用した提案を行っています。実施しているのは左記にある5つの診断です。これらのデータを分析し、長期的視点でより良い提案につなげています。


業界の既成概念にとらわれず、他業界の経営手法を取り入れることで、新たな効果的なアイデアが生まれる可能性があります。











例えば、建物劣化診断によって大規模修繕工事の必要性が高まってきていることが事前に分かれば、その費用を準備することができます。また、キャッシュフロー診断をすれば毎年貯めておける額も予想できますし、借り入れをした場合の採算性も確認することができます。毎年の賃貸経営診断によって現状の課題と対策を見直していくことで、臨機応変に対応していくことも可能となります。











株式会社 市萬 賃貸事業部 課長

宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士・賃貸不動産経営管理士

竹内 将人